あかおにはかつてドイツに住んでいた。暮らし始めて何年も経ったある日、ふと思い当たった。ドイツ語に「エイ」って母音の入った単語あったっけ?
ローマ字読みなら「エイ」と読める綴りはある。“e’と”i“の組み合わせの”ei“が。だが、これは二重母音といわれるもので、「アイ」という発音になる。
たとえば数字の「1」。これは”eins“と綴り、読みはカタカナで表記するなら「アインツ」。「分ける」の”teilen“、「叫ぶ」の”schreien“、「小さい」の”klein“は順に「タイレン」、「シュライエン」、「クライン」となる。
二重母音には他にも”a”と“u”を組み合わせた”au“、”e“と”u“を組み合わせた”eu“がある。それぞれ「アウ」、「オイ」という音になる。”eu“もなんで?の対象になって良いのだが、あかおにのアンテナが反応しなかったので、ここでは置いておく。
「エイ」母音を持つ単語は本当にないのか?
しばらく辞書のページをめくる日が続いた。手持ちの辞書の全ページを調べ上げたわけではないが、短期調査によれば、やはりなさそうだ、という仮の結果が出た。
周りのドイツ人にも「エイ」母音を知っているか尋ねてみたが、ああ確かにないかも、で、だからどうしたの?的な反応か、考えたことすらないや、といった興味ゼロの人が大半だった。
そんなわけで、この謎はいまだに解けないまま今日に至っている。
いつかどこかの図書館で答えを見つけられるか、何でも知ってるドイツ語博士みたいな人物と出会えると良いのだが。
大学生の時にこの疑問が湧いていたら、質問できる人はいっぱいいたのに、残念なことだ。教授陣にはマニアックな人が多かったので、答を持っていなくても協力はしてくれたかもしれない。
調査保留のまま約20年が過ぎた。 ずっと放ったらかしていてなんだが、あかおにはまだ諦めてはいない。きっと調査を再開する。たとえそれが他の誰の役にも立たずとも、知りたい気持ちが消えない限り。